小説「水なき雲」三浦綾子

たまには一般小説の中の母子相姦でも。
三浦綾子の「水なき雲」。
中公文庫にもなっているので、今でも手に入れやすいですね。

母子相姦者としてものすごくかいつまんでいうと、受験生の主人公は自分より優秀な従兄弟が母親と近親相姦をしているのを見てしまって、自分も…と妄想をかきたてられていたらその従兄弟が受験に成功した後にあてつけのように自殺してしまうお話。
ラストは主人公の家庭の瓦解を予感させるところでエンド。
そんな感じですね。

もう少し詳しく。
受験を迎える息子を持つ姉妹。
物語は息子の一人である純一を主人公にして、展開していきます。
家庭に深入りしようとしない父親、自己中心的で優秀な息子（主人公から見た従兄）を持つ姉に嫉妬を感じている母、過去の不幸な事故（母親のせい）により新しく何かを覚える記憶力を喪失してしまっている弟。
そして主人公にとって幼いころからずっと憧れの存在だった優秀な従兄。
主人公純一を取り巻く環境はある意味で平凡だったのかもしれませんが、受験が迫ってきた頃、急展開を迎えます。
憧れの従兄が実の母親と肉体関係を持っている事を主人公は知ってしまいます。
そして受験に「成功」した従兄がその晩自ら命を絶った時、そして自分の母親も父を裏切って従兄の父親と肉体関係を持っている事に気づいてしまった時…とっくの昔から崩壊しかかっていた二つの家庭は再生のための最後の「大破壊」を迎えるであろう直前で物語は幕を閉じます。
家庭の形と崩壊、そして個人の確執と絆、そして親子とは、愛とは。
物語が抱えている様々なテーマが結末に向けて緩やかに加速し、落下していくカタルシス。

恥ずかしながら、三浦綾子先生の著作を読んだのは初めてでした。
作品そのものはずっと昔に書かれているため、今読むと見栄っ張りな教育ママ、というのはステレオタイプなキャラ設定の印象を受けました。
登場人物の話し言葉でも少し古さを感じてしまったのも事実ですが、ここに描かれているのは現在でも通じる重さがありますね。
個人的には主人公の苛立ちと父親の孤独感が融和する（家に帰ってこない父親の真実）を知るシーンが一番強烈でした。
母子相姦者としては少し物足りない気がしないでもないですが、我儘で見栄っ張りな女に振り回される息子、という構図は最近見ないので逆に懐かしい気がしないでもない。
エロ目当てだと肩透かしかもしれないですけど、興味があればどうぞ。