さて今回は月一連載の第三回です。
GW明けからずっと毎日更新してたら、6月分の月一連載を掲載し忘れるという大失態でした。
いや、お恥ずかしい。
前回まで同様オムニバス形式でほぼ独立してますので、どこから読んでいただいても基本的に問題がないです。
舞台のモデルは出身地のシャッター商店街、テーマとしては日常の中の「母子相姦のある風景」となり、今回は町の個人営業の電気屋という感じですね。
商店街にある個人商店の店主ってなんかいつも機嫌が良くないイメージがあるんですが、どうですかね。
宜しければどうぞ。
「電気屋」

夜の6時に少し前、早めにシャッターを下ろした。
どうせ開けていたってこれから客なんて来ないだろう。
まして今日みたいな祭りの夜に、わざわざ蛍光灯や電池なんて買いに来ることもないだろ。
もう少しすると花火が上がる。
そうしたら二階の窓からならよく見える。
そこで早い晩御飯を食いながらその時間を過ごす。
俺が生まれる前から我が家では祭りの夜はずっとそうしてきた。
50年以上前、親父の親父がこの商店街にちっぽけな電気屋を開業した。
それ以来、親父も、そして俺もガキの頃からずっと祭りの花火を二階で見てきた。
地元すぎるから今はもう祭りだからって会場の神社まで歩いていくような事はない。
寂れたこの町もこの日ばかりは珍しく観光客が溢れて、チンピラもヤクザもヤンキーもやたら出歩くから、ウチみたいなド地元はかえって避けるくらいだ。
それでも地元の商工会議所は地域振興を謳ってるからウチにまで祭りの寄付金を募ってくる。
馬鹿馬鹿しいかもしれないけれど、それが現実で事実だ。
くそったれめ。
こんな寂れた商店街にも夢があった。
大昔はバスの増便のために乗り合い所を新たに作ろうかとか、高速が近くを通るとか夢みたいな話があったらしい。
昭和50年代頃の話だ。
そんな明るい未来なんて結局来なかった事は平成生まれの俺はよく分かってる。
くそったれめ。
電気屋は創業50年を何とか超えられたけど、それで終わりだ。
親父が急逝し、この店を続けようという意思は俺にはもうなかった。
この店はもうすぐ閉店する。
そしたら隣接する市にある電気部品の工場に俺も働きに出る事になる。
くそったれめ。
イライラする気持ちを抑えて、吸い殻を灰皿に押し付ける。
二階の窓から見下ろす通りを行き来する人の姿が増えてきた。
花火の時間をピークにどんどん増えてくるだろう。
「人増えて来たねぇ」
そう言って母親がスイカの載ったお盆をもって上がってきた。
「まあ、天気もいいしな」
そう言って俺はお盆を受け取って、小さなテーブルに乗せた。
傍らに腰かけた母も少し身を乗り出して窓の下を見下ろし、祭りの喧騒と湿気っぽい夏の夜の空気を部屋に入れる。
子供の甲高い声に屋台の呼び込み、誰かが駆けていく足音。
普段はろくに聞こえない音ばかりがこの日だけはシャッター商店街にも満ちる。
祭りがあってこれだけ人が通ったって誰もその道すがらにある商店街の店なんかろくに見やしない。
それも俺は子供のころから知っている。
くそったれめ。
カラカラカラと窓のサッシを滑る音を立てて、ゆっくりと窓を閉めた。
パンと音を立てて完全に閉じられると、急に部屋はシンと静かになる。
ベルトを緩めると、キツかった腹の肉が少し楽になった。
ズボンのホックを外して膝下まで脱いでしまうと、下半身だけ下着姿になった。
少しためらう様にゆっくりと母の手が下着越しに触れてくる。
すっかり堅くなった俺のそこはもどかしい刺激で余計に硬度を増すようだった。
目の前の母の頭がゆっくりと下がっていく。
下を向いていてよく見えないが、温かく柔らかい唇の感触がモノを包むように触れてきた。
濡れた感触が下着に伝わってきてちょっと気持ち悪い。
母の唇が蠢くたびに唾液を染み込ませているのか、下着の濡れている個所が広がってくるため、ちょっと嫌で俺はもう一度腰を上げて下着も下げた。
露わになった俺のモノを見いるようにして母は掌で握りしめてくる。
そして今度は赤い舌を覗かせながらもう一度触れてきた。
思わず小さく息が漏れたのでもう一度だけ窓の外を見たが、行きかう人々は誰も二階の窓何て見上げようともしてなかった。
薄く白いブラウスを着ていた母の上半身は既に汗ばんで、ブラの線が透けて見えていた。
丸みの帯びた肩がまるでいつか見たロボットアニメのキャラみたいにも思えた。
けれど、その前の胸の膨らみはもっとはっきりと丸みを帯びていて、シャツが隆起している。
腕を伸ばしてその膨らみに手を当てると、母は上目遣いで俺を見てきた。
目尻の皺と口元のほうれい線がちょっと目立ってきたが、頬を赤らめた表情は艶やかな色気があった。
といってもいやらしさよりはむしろ母が生来持ち合わせてる清潔感漂う印象を受ける。
思えばこんな田舎町のシャッター商店街の寂れた電気屋の2代目に嫁ぐにはちょっともったいないくらいだったんだろう。
大学出で信金の受付をやっていたのなら、他に男も居そうなもんだろうに。
もっともそれから25年以上も経ってそれなりに今の立場に似つかわしいおばちゃんにはなってきたんだけど。
そんな母親と一線を越えて関係を持ったのは俺からだった。
はっきり言って好きになったからだ。
母親なのにか、母親だからか、それとは関係なく、かは分からない。
ある日、親父が特約店関係の用事で店を空ける時があって、仕事柄いることの多い両親だったからそん時しかないと思ったんだ。
夕方くらいに親父が戻ってくるから、それまでは店番してなきゃいけなかったんだけどとりあえず用があれば呼んでくれって札だけレジんところにおいて、奥の間でヤッた。
商店街の通り沿いはどこも店舗用のスペースが大きいから1階が狭くて二階が住居になってる。
だけど、曲がりなりにも店を開けてる以上は二階にいったら商品や金が持っていかれると母がうるさいから仕方なしだった。
終わったらさっさと着替えてどうせ客も来てない店の方を見に行ってしまったから、随分太い神経をしてるなって思ったんだ。
けど、思ってたより早く親父が戻ってきたから先に母が店に戻ってて正解だったと思いながら俺は急いで奥の間の片づけをした。
親父が死んだのはそれから4年後の事だった。
それまで母と俺は密かに関係を持ち続けた。
我が家の電気屋は経営どうこうより、継ぐ継がないより、いつ店を閉めるかのようなところだった。
そういう陰鬱な話題が食卓に上がる事はなかったから、本当に親父が閉めるつもりだったかは分からない。
少なくとも俺はとりあえず工業学校を出てから、店を手伝う様になった。
知り合いの電気系の工事屋にも修行兼副業で入りながらだけど。
電話回線をやるって話だったのに、たまに電気配線もやったりした。
夜に電話で呼びつけられる時もあったかと思えば、一週間以上仕事がない時もあった。
それでも俺は色々出来るようになったし、良かったんだろう。
親父が急死したのは巡りあわせのようなもんだった。
具合が悪いって言って病院に行った数日後だから、よく覚えている。
ある朝いつもなら起きてくる時間に起き上がって来なかったんだ。
それで終わりだった。
最後に前夜交わした会話は何気ない内容だったから、思い出せないのが残念だった。
多分巨人の事だった記憶がある。
それからしばらくは親父の葬儀やその他もろもろの事で瞬く間に2か月ほど経った。
知り合いの工事屋は俺が店を閉めて働きに来ると思っているらしく、その前提で話してきたけど、俺は決めかねていた。
一度も言ってなかったけど、店はもう止める方向なのは母も俺も同じ気持ちだった。
ただ親父が死んですぐに閉じるのは無念だろうからと今さら訳の分からない孝行意識のようなものが出て、もうちょっとだけ俺が継いでやる事にした。
俺が一応代替わりって事で三代目になるのが決まった日、親父が死んでから初めて母とセックスした。
俺と関係を持つようになっても親父への気持ちは無くなってた訳じゃなかったから、途中で母は泣き出してしまった。
親父を思い出したのかもしれないし、今さらだけど悪いような気になったのかもしれない。
それで俺も萎えてその日は出来なくなった。
でもその翌日はもうヤッた。
店を辞めるにあたって在庫とか法務的な事も含めて、色んな後処理を進めなきゃいけなくなった。
自営業を閉めるっていうのはなかなか面倒なんだなって改めて思った。
母はその頃、よく店の掃除をするようになってた。
生前の親父が磨いていたわりにはついに売れなかった掃除機や扇風機を撫でながら色んな事を考えてたんだろう。
そんな時は俺も声はかけられなかった。
心と体っていうのは本当に不思議なもんだ。
別に俺は親父が嫌いだった訳でも憎かった訳でも何でもない。
ただ母親とそうなってからは邪魔に思う様にはなってた。
そんな気持ちが芽生えてしまってたから、死んだときにも後ろめたい感情が生まれたんだと思うし、だから供養のためもうちょっとでも店を続けようって思ったんだ。
母もそうだったんだろう。
儲からない店でも冴えない親父でも、母にとっては人生の大半を捧げた対象なんだ。
思いがけず俺に望まれたとはいえ無理矢理でもないのに関係を持ってしまった理由としてはそういう自分の人生をやり直したい感情が0だったわけじゃなかったからだろう。
でもやっぱり親父が死んだときには俺と同じように後ろめたい感情を持ったはずだ。
だから泣いたんだ。
俺は泣かせてしまうとも分からず、セックスを求めてしまったんだ。
本当はセックスを通じて母を慰めてやるつもりだったし、慰めてやれると思ってたんだ。
くそったれめ。
こんなに俺は大きくなったってのに、やれるようになったのは電気工事くらいで、泣いている好きな女の気持ち一つ分かりゃしねぇんだ。
くそったれめ。
俺は決めた。
店を閉めて、家も売ってこの町を出るんだ。
「それじゃあ私が暮らすとこまでなくなるじゃない」
「違うよ。母ちゃんも来るんだ」
「どこへ?」
「俺の行くところだよ」
そこまで言うと母はさすがにちょっとだけ呆れたような顔をした。
でも、もう決めたんだ。
「俺について来いよ。母ちゃん」
もう一度言った。
曇った表情が母の迷いを物語っている。
気持ちが揺れている。
でもどんなに揺れても、最後の答えは半ば決まっているようなもんだった。
「こんなとこで住んで、蓄えも年金もろくにないから死ぬまでパート暮らしが関の山だよ」
「………」
「なぁ」
「…アンタはどうなるのよ、すぐ私が邪魔になるよ」
「ならねぇよ」
「なるって」
「ならねぇよ!」
思わず声を張り上げてしまうが、母は一歩も引かなかった。
睨みつけるような強い眼差しをした母の瞳は涙が目いっぱい浮かんでいた。
無理にキスをしようとすればムキになったように顔を背けてくる。
こんなに意地を張るところなんて見た事なかった。
やっぱり俺は母の心が分かってないんだ。
俺が母親のために人生を犠牲か台無しにするように思ってるんだろう。
そんな事ない。
そんな事ないんだよ。
くそったれめ。
「頼むから来てくれよ、母ちゃん」
「………」
「………」
「………」
「なあ、母ちゃんにとっては俺は息子でも新しい男でもどっちでも良いんだよ」
「………」
「俺が………」
そこまで言いかけたところで母は諦めたように唇を押し付けてきた。
閉じられた母の瞳からはまだ涙が流れ落ちている。
もう腹をくくるしかないんだ。
まるで心中するみたいな切迫感だ。
その日、初めて母と俺は避妊せずにセックスした。
それまでは着けなければ入れる事も許されなかったのに、最後まで何も言わなかった。
多分母もそうされる覚悟は決めてたんだろう。
俺は本当にいいのか、土壇場で母が嫌がるんじゃないかって思って最後まで母をじっと見てた。
強い勢いで精液が母の胎内に放たれた瞬間何でだか分からないけれど、妊娠したって思った。
生まれて初めて中出ししたからかもしれないけど、母の胎内に全て吸い込まれていきそうな感覚を感じた時、直感でそう思った。
話は祭りの日に戻る。
母と俺は疲れた身体を休めるように壁にもたれたまま、ぼんやりと窓の外を見ていた。
明るい顔で通りゆく浴衣姿の人たちを見てると、不思議と自分たちまでその輪の中にいるような気がしてくる。
テーブルの上のスイカを一口含むと、母の唇に押し当てて甘い汁を吸いあった。
ガキの頃、食べてたのと少し違って、少しおぞまじくもある気がする。
錯覚だろう。
通行人はやっぱりこちらなど気にしないから、こちらも気にしないでそのまま何度も唇を押し付けあった。
砕けたスイカの破片が色を失って母の裸の胸を伝い、膨らんだ腹の上に乗っかった。
出っ張り具合が大きいからか、それ以上動かなくなるのを見て母と俺は思わず顔を見合わせて笑った。
「産む時には私50よ、もう」
そういった母はもう達観したかのように苦笑いを浮かべていた。
父が死んでから避妊しなくなったセックスにより、母は息子である俺の精液で妊娠した。
本来ならもう閉経するかどうかの瀬戸際だった母の49歳という年齢はもうギリギリのラインだった。
もう1,2年遅かったら出来なかったんだろう。
実際に母は出産後1年も経たずに閉経した。
深い苦悩と煩悶により眉間には皺が寄っていた。
思えば俺と新しい人生を生きると決めてからそんな表情が増えているような気がする。
高齢出産のリスクやその類の本を柄にもなく読み込み、胎児の健康状態まで確認し…俺は母に産んでくれと言った。
その時の母の表情は忘れられない。
暗い闇が広がっているような絶望的な瞳で俺を見ていた。
でも、多分堕ろせと言っても似たような目で見られたんじゃないかとも思う。
それでももしかしたら内心はホッとするかもしれない。
いや、多分二人とも内心はホッとしてしまうんだろう。
でも産ませたかった。
産んで欲しかった。
そう言うと、母は諦めたように年齢の事を言って笑った。
完
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