短編「遠く離れていく母」
- 2019/02/11
- 00:44
年明けに公開した前作の「西風」がこちらでもpixivでもそこそこ評判が良くて大変嬉しかったのですが、今作は一人称体験談風です。やっぱりこれが個人的には王道なんですよね。
もうちょっと色んなのにトライしないとな、と思いながら書き出すのはいつもこのパターンが多くて。
それでは宜しければどうぞ。
父が病死した。
俺も大学を出て既に上京して働き始めていた事もあり、一人になってしまった母を気に掛けながらも、頻繁に帰郷出来るはずもなく自然と足が遠のいてしまっていた。
何年も無沙汰しているような状態が続いた後、勤めていた会社がとある不始末で営業停止になってしまい、従業員も待機状態という扱いになった。やむなく重い腰を上げて里帰りすることになった。
見慣れた地元の駅まで迎えに来た母を見た時、俺は一瞬誰だかわからないくらい母が昔の姿と変わって見えた。年を取ったのもそうだけれど、着ている服や化粧も父が生きていた頃とは違い少し若作りしている風だったからだ。
家に戻って二人で話をするうちにたしかに母は母のままだと思ったけれど、少しして母は重い口を開いて再婚しようと思うと言った。実家の周辺は田舎で亡父にとっては生まれ育った土地だったが、遠隔地から嫁に来た母にとって一人で生きていくには閉鎖的な土地柄もあり決して暮らしやすい町じゃなかったはずだ。母はずっとその事を悩んでいたが、父の手前ずっと言えなかったのだと言って涙ぐんでいた。
母には母の人生があって自分の幸せを追うべきだと俺が言うと、母はただ泣くばかりだった。父が死んで何年にもなり、ただ一人でこの家を守るだけで残りの一生を終えるのはあまりにも哀れに思えたからだ。
「あんたにこんな風に頼るとは思わなかった」
そんな風に母が言ったのは少し落ち着きを取り戻してからだった。
「いいよ、別にこれくらい。」
親にお礼を言われたのが気恥ずかしかったのか何だか俺は思春期の頃みたいに素っ気なく答えた。
「もうすっかり大人になったんだね。私なんかもうお婆ちゃんになって…」
「そんな事ないだろ」
潤んだ瞳で俺を見上げてくる母を見ていると、自然と母が一人の異性に思えてしまう。
職場でバツイチの女と付き合っていた事もあるかもしれない。
母であり、女でもあるという両立しそうにないものが確かに一人の女の中に存在しているのを彼女の中に見た事があった。
その事を思い出しながら俺は母の肩を自然に抱き寄せていた。
少し驚いた表情をしたが母は大人しく俺の方に頭を預けてきた。
彼女にしたみたいに頭を軽く撫でると、母ははにかんだ様に微笑んだ。
息子にそんな風にされている事が母なりに照れくさいのだろう。
俺の中で何かが揺らぎ続けていた。一人の女として新しい人生を生きようとしている母を応援したい気持ちと行ってほしくない気持ち、そして一人の異性として見てしまっている気持ち。抱き寄せた母の肩を少し強く引き寄せると、さしたる抵抗もなく母はさらに上半身を委ねるようにもたれかかってきた。
どれくらい時間が経っただろう?数十秒だったかもしれないし、数分だったかもしれない。何も話さなくなったまま沈黙の時が流れた。
俺はもたれかかっている母の顔を見ると薄らと母は瞳を閉じて薄らと涙を滲ませていた。
互いの吐息が当たるくらいに近いから母も分からないはずがないのに、押しのけようとしてこなかった。吸い込まれるような母の紅い口唇ににそのままゆっくり、ゆっくりと近づいてそのまま押し当てた。口紅の濡れたような感触。
向かい合うように抱きしめると母が何か言い出しそうだったのでその前に唇を塞いだ。
小さく息を漏らした母が何ともいえず艶っぽかった。
「いいの?あんたこんな事しても…」
母は俺に言うというより自分自身に問いかけるように小さな声で呟くように言った。
何ていっていいのか分からず、もう一度強く抱きしめて唇を重ねると母は身を任せるように俺の腕の中で力を抜いていった。こうして俺たちは言葉も無く互いの同意を確認した。シャツのボタンに手を掛け、母の胸元をはだけさせると母は初めて熱い息を漏らした。自分からは絶対誘ってこないが誘えばすぐ受け入れるという性への対応がバツイチの彼女とよく似ている事が不思議だった。
貪る様に母の唇を塞ぎながら乳房に顔を押し当て乳首を吸い続けた。母の甲高い声が空っぽの家に充満し、体を弄るほどに母の身体は汗ばんだまま何度もくねらせて肌が紅く染まっていった。下着に指を掛けた時、母は自ら腰を軽く浮かせて脱ぎ取るのを手伝ってくる。完全に脱がし切る前に母の上に圧し掛かると昂ぶった瞳で俺を見上げていた。ぐっと押し込むように前に突き出すと少し堅いような入口の感触が少し押し広げられるようにして埋まっていく。
入った瞬間母は小さく恐れをなしたような声を上げ、俺と繋がった事に今更驚いたような表情を見せた。夢心地のままで行為を続けてしまったけれど、本当に一つになる事は母も信じられない思いだったのだろう。それからは付き合っている彼女とはまるで比べ物にならない狂熱的なセックスだった。
母もおそらくそうだっただろう。普段は自制的だった母とは思えない程、獣のように吠え口の端から涎が流れ流し感じ続けていた。俺は俺なりに母がいくまで頑張ろうと思いながら懸命に堪えるのに必死だった。母親を抱くという事がどれくらい特別な事なのか、実感した。やがてひときわ激しくなった母の声から終わりが近いと分かり、間もなく訪れた母の絶頂にわずかに遅れて俺も母の中で吐き出してしまった。
俺の腕の中で顔を真っ赤にした母が目を片手で覆って何とか呼吸を整えようとしていた。
母の身体の上から降りて脇に合ったタオルで汗を拭いていると母はよろよろと起き上がり、浴室に消えていった。
母がシャワーを浴びている音は聞こえてくる中、俺はさっきまでの事を考え続けていた。
一人でずっとこの家で暮らしていた母が再婚を考えるようになって、そして…。さっき俺に誘われた時に意外に手慣れた様に受け入れた様子を見て、俺の知らない母がこの数年間にあったんだと思った。その時俺は壁際に昔から置いてあった低いタンスの上に置いてあった父の写真が無くなっている事に初めて気づいた。たしか何年か前の法事の時には若い頃の父が移っている写真立てが置かれていたはずだった。
その事の意味をぼんやりと思いめぐらせていると、濡れた髪をタオルで拭きながら寝間着姿になった母が出て来た。
「あんたもシャワーしてきたら?」
気が抜けるほど、いつも通りの母の声にさっきまで深刻に考え込んでいた俺は何だかバカみたいな気持だった。実家の風呂に入るのは久しぶりだった。湯は入っていなかったが、タイルで目張りされた家庭の風呂場には合わない真っ白なユニットバスのような浴槽。
俺が中学の時に浴槽が壊れて、たしかそれだけ買い直して使えるように工事したものだ。
だから古いタイルの風呂場と真新しい浴槽が変にミスマッチしてしまっている。
見慣れたそんな光景が変に目につくのはさっきまでの母との行為が蘇ってくるからだ。俺が小さかった頃はもちろん母と二人で何度もこの風呂に入っている。その母としてしまったんだな…。母の汗と化粧の匂いがしみ込んだ体を洗い流してから、着替えてリビングに戻った。それからさっきの事はなかったように二人で夕食を済ませた。
何気ない話題を続けているが母は再婚の話も、もちろん俺との先ほどの事も決して口にしなかった。俺も何か母がどう思っているのか知りたくて堪らなかったが、喉の奥に押し込められたように口から出てこなくなってしまった。テレビではショウガが健康に良い理由というやけに能天気なテーマをやっていた。司会の落語家のやけに明るい口調がぎこちないリビングに空しく響く。夕食の後、背中を向けて食器を洗いだした母の背中は少し疲れて見えた。
「ちょっと…だめよ」
「………」
「さっきのはもうあれっきりなのよ。」
「………」
「ねぇってば…」
「………」
何も言わないまま俺は母の後ろから強く抱きしめていた。
そのまま母の白い首筋に唇を押し付け吸い付くと母は少し顎を持ち上げて小さく息を漏らした。
どちらともなく母と寝室に向かった。
普段ならまだまだ寝るような時間帯でなく、夜の闇はまだ明るいくらいだった。
「つけないで…」
蛍光灯に手を伸ばしかけた俺に母は恥ずかしそうな声で言った。襖を閉めてしまうと部屋はほとんど真っ暗になってしまう。本当は明るいところで母を見ながら抱きたいと思ったけれど、母の意向を尊重してそのまま部屋を閉じると母から俺の体に抱き着いてきた。
母の小さな手が伸びてパジャマ越しに俺のモノに触れてくる。明るいところで息子に対して自ら積極的にする姿を晒すのは母なりに嫌だったのだろう。既に堅くなっているのを確認するように母の手が動くと、そっとズボンを下ろして母は直接触れはじめた。カリに指を掛けたままゆっくりと指を回すように刺激を与えてくる。
その時俺の腕の中にいた母がすっと静かに屈みこんだ。まさかと思う間もなく、母の熱い吐息が俺のモノに、そして滑ったような唇がすぐに押し当てられた。
頼んでもいないのにあの母が自ら……。記憶の中のどの母とも結びつかない行為だった。
たとえさっきリビングで繋がったとしても、そんな淫らな事を自らするはずがない…母性への幻想を抱いていた俺は母もまた一人の女なのだとその時本当の意味で知った。
無言で口の中で俺のモノを嘗め回し続ける母…音でしか聞こえてこないが母の様子からして自らそうしたくなるほど昂ぶりは冷めていなかったのだろう。母の両肩を抱いて口唇をしばし味わった後、布団に寝かせて再び覆いかぶさる。
「いいからもう入れて…」
愛撫し返そうと思い、パジャマに手を掛けて下ろすと上ずった声で母はそう言った。暗闇の中でも母の両脚が驚くほどに柔らかく開かれるのが感触で分かった。少し体重をかけながら押し込んでいくと、俺も母もさっきよりも遠慮なく悶え夢中で貪り合った 。もう何の遠慮も無かった。それから俺が仕事に戻るまでの数日間は狂ったように求めあい、ほとんどの時間を寝室で過ごした。俺が東京で出来た彼女の話も、母が再婚を考えているという男の話も何もしなかった。ここ数年間の不通が嘘だったように、これ以上なく深く繋がりあった。下着すら身に着ける事もない数日間を過ごし、最後の日に俺が駅に向かう直前まで続けられた。
それから数か月後、母から再婚するという電話が入った。携帯電話は持っているが、母は今もメールが使えない。もちろんラインも。その話を聞いたとき、俺は僅かな胸の痛みも感じたけれど素直におめでとうと言えた。いつ家を出るのか、片付けや家のモノの処分等事務的な話を続ける。俺と違う名字になる母がどこかひどく遠くに行ってしまう気がした。顔も名前も知らない母の新しい男との暮らしにはもう俺が入る余地などまったくないのだろう。
「じゃあね、母さん」
「うん、あんたも元気でね。またね」
何かを言いたかったけれど、言葉は遂に出てこなかった。
完

- テーマ:18禁・官能小説
- ジャンル:アダルト
- カテゴリ:母子相姦小説 短編
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