いつものごとく紙書籍やネット上の女性の書いたエッセイなどをよく読み、なるべく女性心理や書き方などを参考にリアリティを感じさせるものを心掛けています。よろしくお願いします。
彼の勃起したペニスがあてがわれるとゆっくりと入ってきた。
緩やかな膣が彼のモノで満たされていく感触に反射的に体が震えてしまう。
肉の体温が膣内を通じて伝わってくるからだ。
自然と全身の体温までも上がってくるようで冷えて軽く痛み始めていたつま先から下半身まで熱くなってくる。
ほんの数センチ入り込んでくるだけの繋がりだというのに強い刺激が走り、不思議な満足感と快感が湧いてくる。
少し苦しいので少し背中を反らして体勢をわずかにずらすと、彼は小さな声をあげた。
「だめ、そんなに締めないで」
(そんな風にしている自覚はまったくないんだけど……)
自分の意思と反するところで反応してしまっているのだろう。
その内に彼は彼は私の下で苦し気な様子になる。
熱いペニスが膣内でピクピクと震えているのが分かる。
実際に限界が近いんだろう。
「まずいって、本当に出ちゃうから」
そんな弱気な言葉を吐く。
ずいぶんと態度が変わったものだと内心呆れながら、腰を上下に動かすのは止めなかった。
入れてからほんの1,2分もしていないのに。
「出そうならいいよ。大丈夫だから」
そう言うと彼は少し落ち着いたようだけど、必死に我慢しているようだった。
「あ、だめ、本当に出るから……」。
そんな彼の言葉に構わずにそのまま動き続けると
彼のペニスが私の胎内で一回り力んだように堅く膨らんできた。
次の一瞬、彼は何かよく分からないことを叫んだ。
そうすると私の胎内で彼が痙攣したように動くと、
急にジワっと熱いものが溢れてくるのを感じる。
射精したんだ、と頭では分かったものの実際には数秒間何度も出続けているようで
ドクンドクンと心臓の鼓動のように震えている。
私の膣の中で身を震わせていることが何だか可笑しくも愛おしい。
自分の中に溢れるほど彼が出したのだという事実に幸福さえも感じる。
数分後、ようやくペニスの痙攣が止まるとゆっくりと腰を持ち上げて彼のペニスを引き抜いた。
途端に溢れかえった彼の精液の匂いが立ち込める。
出すものを抱いた彼のペニスは本来の幼さの残る仮性包茎の形に戻っている。
人差し指くらいの小さなものだというのに、入ってきた時はまるでそんな風には感じなかった。
まるで焼けた真っ赤な薪を差し入れられたような錯覚さえ覚えたくらいに。
体にはまだその感触が今もなお鮮明な記憶として残っている。
あれはいったい何だったんだろう。
身も心も全て軽くなっていくような、ほんの数分間程度の行為。
決して十分とは言えない稚拙な交わりだけど、親子という絆があるからこそあんな感覚が芽生えたのではないだろうか。
元々一つだった互いの肉体がほんのひと時だけ原始に戻り、私は女から母に戻った。
夢でも見ていたかのような本当に不思議な感情だった。
隣ではまだ彼、息子が眠っている。
少し乱れた薄茶色前の髪が赤みのさした額に垂れている。
頬にも口元にもしわ一つない白い素肌。
長い睫が少年から若者に移り変わる時期の儚さを映しているようだ。
多分、さっきまでと今とでは違うのだろう。
ずっと童貞だったさっきまでとそうでなくなった今。
こうしてみる限り、思春期特有の苦悩なんてまるで嘘のように見えない。
ずっと影がさしたような暗い瞳をしていた。
少しはその闇は晴れたのだろうか。
それとも深まったのだろうか。
息子の頬に掌を重ねると、自然と涙がこぼれた。
今日、この時も彼の青春の1ページというやつになるんだろう。
いつか見た、古いフランス映画を思い出した。
劇中で不倫していた母親と思春期の息子が重なり合う場面があったからだ。
「懐かしく思い出すのよ」
映画の中で母親は息子にそう語りかけた。
「美しく、貴重な思い出として」
息子にとってもそうなるだろうか?
今の私はいつか彼の貴重な思い出の中で輝くのだろうか?
ベッドの脇に立てかけられた姿見に映る自分の顔を眺めてみた。
無表情でつまらなさそうな顔をした中年女がいる。
口元のシワを抑えたり、目を見開いたり、軽く横を向いてみたりしたけれど、とてもあの女優のようにはなれない。
窓の外はまだ暗い。
冬の夜は長く、静かだった。
雪も降ってないのにしんしんと冷えてくる。
夜から朝に変わっていく時間帯、太陽が上がるまでが長い。
「そろそろ起きて。帰らないと」
起きかけている事を察した私はそう声をかけた。
何か呻くように顔をぐっと枕に埋めると、大口を開けてあくびをする。
私も息子もまだ裸のままだった。
「早くシャワーして着替えて出ないと。延長料金を取られるから」
そう言って私は立ち上がって先にシャワーに向かう。
息子は顔だけこちらを向けたような気配がしたけれど、それ以上何も言わなかった。
車のハンドルを握って、夜明け前の街を走りだした。
まだ走っている車もすれ違う人もいない。
こんな片田舎にある郊外のラブホテルだからだろう。
息子はただ助手席に座って外を見ている。
そんな彼を見ていると昨夜の息子が嘘のようだった。
あの時の息子は少年ではなく、一人の男になりかかっていた。
昨夜、薄っすらと筋肉と産毛の生えた体つきになっているのをこの目で見た。
そんな彼の身体を抱き、私は組み敷くように上に乗って彼の肉体から童貞を失わせたのだ。
限界の近くなった息子のか細い声が蘇ってくる。
実の息子としているという特殊な感覚が全てに勝っていた。
女として息子とセックスをしたというのに、私は母親として彼を包み込み先導し、導いているような感覚だった。
その時の私はどうかしていたのかもしれない。
けれど、あの時私はたしかに彼を善導しているという思いがあった。
いつか幼かった彼の手を引いていた頃のように。
「怒ってる?」
遠慮がちに息子が私に声をかけてきた。
「……まあね。でも済んだことを今さら言っても仕方ないっしょ」
務めて私はなんでもない声で答えた。
息子はなおも何かを言いかけようとしては、言葉を選びきれないようだった。
たぶん何とか謝りたいんだろうな。
それが分かったから、別にもう良いのにと思った。
そういうところは私にも元夫とも少しも似ていない。
親ばかだろうけど、そういうとこは本当に彼の長所だと思う。
イマドキノワカモノにしては人を気遣える。
互いに浮気して勝手ばかりしたあげく離婚した親の一人息子なのに。
だから、昨夜は受け入れてやろうと思えたのだ。
彼の頭にポンと左手を乗せて軽く撫でてやった。
「気にすることないんだわ」
そう言うと、息子は小さく笑った。
「そっか」
「そうよ」
そうして二人で笑い合えた。
一度一線を越えた相手は息子であろうと男になってしまう。
正確には息子にとって私は母親ではなく女にもなったんだろう。
血の繋がり以上の特別な関係になった自覚は多分お互いの中にあった。
一度壊れたら取り返しがつかないような、そんな関係。
けれど私は後悔はしていなかった。
どうしたらいいんだろうと心配するよりも、なるようにしかならないという諦めの方が強い。
元夫と離婚するかどうかの方がよっぽど悩んだくらいだったから。
思えばあの時別れるという決断をしたから私たち親子はこうなる運命になったんだろうか。
レールの分岐点がガチャンと切り替わって、「こっち」になったのかもしれない。
だとすれば私がこうなることを選んだようなものなんだろうか。
息子との新しい暮らしはさほど変化が無かった。
朝息子を叩き起こして慌ただしく学校に送りだしたら支度をして出勤する。
離婚して6年間、ずっと繰り返してきた子育てと仕事に追われる日々。
唯一週末だけは土曜日の夕飯を済ませてから日曜日午前中まで息子とベッドで過ごすようになった。
私は息子のように若い10代の少年と寝たことはなかったし、息子もまた初めて女を知ったのが遠慮のいらない母親であることもあっただろう。
自然と好奇心と肉欲のままに互いの肉体を欲していた。
私にとっても息子との関係は新鮮だった。
いつも一回り以上も年上の相手ばかりだったから素直で純情で自分を崇めるように称えてくれる男性は初めてだった。
親子である気楽さから見栄えを整えて飾り立てる必要も互いに甘い言葉も今さら必要はなかった。
他人とは決して築くことが出来ない究極のなれないだと思う。
腐敗した饐えたぬるま湯に身を浸す、そんなどこまでも落ちていくような感覚。
毎週土曜の夜、私は息子と抱きあって眠る。
始めて彼と結ばれた時のように息子の寝顔を眺めていると、いつも涙が出てきそうな感情に揺り動かされる。
「寝んの?」
寝ぼけ眼のまま薄っすら目を開けた息子が尋ねてきた。
「もっかい出来るっしょ」
そう言って仰向けに寝かせた息子の上半身の上に体重をかけていった。
「ん……あ……」
自分が産んだ息子が再び胎内に入り込んでくる。
ただのセックスなのに誰よりも命の息吹を強く感じるのは同じ血が流れているからだろうか。
本来一つにあるべき姿に戻っていくのを感じて、肉体的な快楽だけでなく精神的な安心感も覚えている。
暖かくて、温かい。
すがるように息子の肩に顔を埋めたまま、腰を動かし続けた。
若く輝きを放ち始めた息子と年を食った自分が今もこうして共に抱き合っている。
きっとこんな日々はそう遠くない内に終わりを告げるだろう。
たとえばそれは彼が18歳になるまでだとしたら。
こうして息子と抱き合って眠る日はあと100夜だろうか。
もしかしたらもっと多いかもしれないし、少ないかもしれない。
けれど、それを数える事にきっと意味はないのだろう。
いつ終わったとしてもきっと私は後悔なんてしないのだから。
終
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