短編「深夜の帰宅」
- 2021/05/01
- 15:04
GWですが、ステイホームという事で皆さんいかがお過ごしでしょうか?
昨年と違い、GWでもプロ野球やメジャーはやっててくれるお陰で日々のニュースは入ってくるのが救いですね。
大谷もう8号かぁ、投手としてももっと勝ってほしいなぁなどと見てられますからね。
という訳で久しぶりの新作です。
来年2022年で尾崎豊は没後30年。
わずか26歳で亡くなってしまいましたが、もしも生きていれば55歳ということになります。一体どんな歌を歌っていたんでしょうか。若い頃の自分の歌をどんな風に語ったんでしょうか。
死後に発売されたオリジナルアルバムの最後の曲は1991年末に急死した母親に捧げた曲「Mama, say good-bye」でした。
母親を亡くしたショックから始まるこの曲は母親の在りし日と人生を思い起こし、息子としての至らなさを悔い、最後には母の永遠の眠りが安らかなものであることを願うものです。
もし歌手が最後に歌った曲に全てが収束されていったとするなら、最後の最後に母親の安寧を歌った事は大変意義深いと思います。
アマゾンのベスト盤のリンクを貼っておきますので、もし関心があればぜひ視聴、出来れば購入してみてください。最後の曲だけバラ買いも可能です。
尾崎豊 ベストアルバム 試聴
この曲を思い起こしながら書きました。
宜しければどうぞ。
(うぅ……苦しい)
重い体を引きずってやっとマンションにたどり着いた。
店で友達と一緒で良い気分だったさっきまでと違って、酒が変な風に回ってる。
(悪酔いだな)
酒の飲み方が分かるようになってからはめったにこんなことはなかったのに。
そうは言っても部屋まではまだ遠い。
エレベーターの壁にもたれると、足元からゆっくり突き上げられるような感覚に陥る。
ふらつきそうになりながら、低い機械音に合わせて小さく呻って堪えた。
幸い途中で止まる事も無く、そのまま自分の部屋のある階にたどり着いた。
壁際の手すりを持って廊下をゆっくり歩く途中、頬に当たる肌寒い風に誘われて外に顔を向ける。
眼下には遠くの都心部の方で空に昇っていく赤い光以外は真っ暗な町が広がっていた。
鍵を開けたドアにもたれるように押し入ると、玄関で倒れ込んだ。
冷え切ったフローリングが今は逆に心地良い。
上半身を固定するように硬い床に乗り上げると、視界がグラグラと揺れているのが落ち着いてくる。
(いっそこのまま寝ちまいたいな)
けど風邪を引くだろうな、とも思いながら気怠さが勝っていて立ち上がる事が出来ない。
(あー、たまにゃいいだろう。明日から連休なんだ)
そう思って意識を放り投げると、頭が一気に重くなってきた。
懐かしい音楽が聞こえてきた。
学生時代は毎日流しっぱなしだったアルバム。
十代のカリスマとも教祖とも呼ばれた日本のロックスター。
とっくの昔に死んでしまったけれど。
そういえばずいぶん長いこと「彼」の歌も聞いていない。
いつ以来だろう。
シンセサイザーが響いている。
そこにベースとドラムが混じりだしてやがて彼の歌声が広がる。
しばし、聞き入っていた。
「本当の自分」
繰り返し「彼」はいくつかの曲でそう歌っていた。
(WOW!)
「彼」のシャウトに合わせて心の中で叫んだ。
ずっと昔は何百回も一緒に叫んでいたもんだ。
その度に親に叱られて。
(いま古い夢を見ているんだ)
そのことに途中で気付いた。
だいぶ昔。
何の根拠もないのに自分の可能性を信じていられた頃。
俺はどこにでもいる十代だった。
青臭くて世間知らずで、そのくせプライドだけは高くて。
壁には「彼」のポスターが張ってあり、ラックには「彼」のCDが入りっぱなしだったCDラジカセが載っていた。
漫画雑誌と灰皿がテーブルに重ねて置いてある。
部屋の天井には蛍光灯が鈍く光っていて、白い煙が漂っていた。
「覚えたてのタバコ」
それも彼の歌詞にあった。
だからか白煙を口から大量に吐き出しては悦に入っていた記憶がある。
おかげで部屋が一気にヤニ臭くなったと母親に文句を言われたもんだ。
酒の影響で脳が眠ってないからだろうか。
何だかゆっくりとまどろむように長い夢を見ていた。
普通ならこれが夢だと気づいた瞬間に醒めてしまうのに。
部屋に母親が入ってきた。
記憶の中にある最後の頃の母親と違い、まだ40歳になるかならないかという頃だろう。
デニムのジーンズに白いシャツという恰好をしている。
蛍光灯の光に照らされて、明るい栗色の髪が輝いて見えた。
(あぁ、若々しいな。この頃はまだ元気だったんだ)
そう思うと、何だか胸が痛い。
本当の自分はもうこの頃の母親よりも年上になってしまっていたから。
「もう、窓開けてって何回も言ってるでしょ」
軽く手をブンブンと払うと母は小言を言って小さく窓を開けた。
煙がこもっていると言いたいらしい。
小さく頭を掻いて誤魔化した。
タバコを吸う事はもう暗黙の内に許されていたが、ヤニの臭いだけは嫌らしい。
いつの間にか夕陽が傾いて窓の外は薄暗くなっていた。
(あぁ、そうか。この頃か)
それが分かったから蛍光灯から伸びた紐を引いて電気を暗くする。
薄暗い部屋の中、手際よく服を脱ぎだした母はやがてベッドに乗ってきて、肌が触れ合う。
母が俺の首に手を回してきて抱き締められた瞬間、母の膣穴に入り込んでいくのが分かった。
正確には夢だから感触なんてないんだけど、記憶の中の感触が重なっているんだろう。
奥まで挿入した瞬間に母は声をあげると、微妙に腰を上げて角度を変えながら深く押し込ませて小刻みに腰を動かし始める。
ギッギっと音を立ててベッドのフレームが揺れる。
「きしむベッドの上」
「彼」のラブソングの世界観だった。
もっとも歌のように切なく繊細な間柄なんかじゃない。
実の母親と日常的にセックスを繰り返していた日々。
猿のように滑稽なほどひたむきに近親相姦にのめり込んでいたあの頃。
社会や大人たちへの反抗だと言いながら、母親と関係を持っている自分が何とも後ろめたく思っていたものだ。
溢れ出る性欲の発散を唯一の目的にしていたから、そういう行為を平気でする状況を受け入れていた。
じゃれ合う事も睦合う事もほとんどなく、互いに無言のままで唇を性器を重ね合わせて絡ませあった。相性も良かったと思う。
若かったから萎える事なんて全く無かったし、何より実の母親と犯っているだけで興奮は覚めない。
それは母も同じようで騎乗位しながら腰を使っている時にじっと俺の顔をじっと覗き込んでいることが多かった。
女性として母をどう見ていたかは今でもはっきりと分からない。
セックスの相手としてうってつけで、時間さえあえばずっとやっているくらいだった。
夏休みになると汗だくになりながら父が出勤した午前中から昼も食べずに夕方までずっと交わっていた事も何度もある。
あの頃の俺の部屋はいつもタバコと母の愛液と精液の臭いが交じり合っていた。
いつも「彼」のアルバムを流しっぱなしだった。
今でも俺は「彼」の歌を聴くと母と繰り返した近親相姦を思い出してしまう。
だからだんだん「彼」の歌を聞かなくなったのかもしれない。
ふと目を覚ますと、ベッドの中だった。
窓からの日差しは明るく時計の針はもう午前10時を回っている。
あんなに飲んでしまったというのに存外、体調は悪くない。
(あれ、いつベッドで寝たんだっけ)
夜中に目を覚まして這って行ったんだろうか。
まったく記憶にない。
古い夢を見た事は覚えている。
まだ母親とやりまくっていた頃の。
遠い記憶を一旦しまって、もがくように立ち上がった。
やっぱりまだアルコールが残っているのか体も頭も重い。
幸いにして気分自体は悪くないけれど。
何か食おうか、それともどっか買いに行くか。
とりあえず一服しよう。
そんな事を考えていると、視線の先に見慣れないものがあった。
ガラス製のテーブルにコップに入った水と胃腸薬の瓶が置かれている。
(俺が、準備したのか?)
コップの水はともかく、あんなに酔っていて薬瓶まで探したんだろうか。
……。
机の写真を見ても、母は笑っているだけだった。
完
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