「あ、お父さんだ」
スマホを手に取った母はそう言って少し顔をしかめた。
「ちょっとごめんね……」
そう言って話し口を手で押さえながら、小声で電話に出る。
「はい……はい……え?本当?」
母が驚いたような顔になるのを、俺は黙って見ていた。
ピッという音と共に通話が終わると、母は俺の方を見て言った。
「今日は帰りが早くなるんだってさ」
「へぇ〜、それは珍しいね」
いつもなら仕事終わりに飲み会や接待があるから、帰ってくるのはたいてい深夜だと思っていたのだけど……。
まぁ、たまにはそういう日もあるだろうけど、やっぱり気になってしまう。
「……どうする?」
「うーん……なら夕飯の支度もあるし」
困ったように眉を寄せる母は脱ぎ掛けていたシャツを羽織り直した。
「そっか、じゃあ仕方ないね」
残念そうな表情を作ってみせると、母は申し訳なさげな笑みを浮かべる。
「ごめんね、また今度ね」
「うん、分かったよ」
そう言うと、母はホッとした様子だった。
本当はあまり乗り気じゃなかったんだろう。
そして、その日の夜。
父が帰宅すると、家族三人での夕食が始まった。
普段よりも賑やかな食卓の中で、母も父も楽しげに会話を交わしている。
もしもいつものように父が帰ってこなかったら、この時間は二人きりで過ごしてたんだろうかと思うと、何とも言えない気持ちになった。
食事を終えると父は早々に風呂に入りに行き、残された俺たち親子の間には妙な雰囲気が流れた。
食器の後片付けをする母の後ろ姿を眺めつつ、俺はソファに座ってテレビを見るふりをして時間を潰す。
やがて洗い物を終えたらしい母がキッチンから出て来て、俺の隣へと腰掛けた。
チラリと目線を送ると、目が合う。
「……ねぇ、手だけで良かったらしてあげようか?」
唐突にそんな事を言われてドキッとする。
「……いいの?」
思わず聞き返す。
「だってさっきからずっと我慢してたでしょ?」
全て見透かしているかのように微笑む。
バレないようにしていたつもりだったんだけど、気付かれてしまっていたようだ。
「ほら、するなら早く」
そう言って脱衣所の方に目線をやった母は、僕のズボンのゴムに指をかけると下着ごと下ろしていく。
僕はされるがままに下半身裸になると、母は股間に手を伸ばしてきた。
既に勃起しているペニスを握ると温かな手のひらに包まれる感覚があって、それだけでも興奮してしまう。
かすかに掌に汗をかいているのかヌルッとしていて、それが潤滑油となって心地良い刺激を与えてくれる。
「もう硬いのね」
苦笑い混じりの母の言葉に恥ずかしくなって目を逸らす。
「ふぅ……んっ……」
鼻息のような吐息のようなものを漏らしながら、ゆっくりと上下運動を始める母の手の動きに合わせて呼吸を整えようとするけれど、上手くいかない。
「ん……はぁ……あっ……」
次第に早まる動きによってもたらされる快感に抗えず、情けない声が漏れてしまう。
「……静かに。早く出して」
呆れたような声で急かされて、射精欲が高まってくる。
「う……んっ!出そう……!ね、口に出させて」
懇願するように言う僕に母は小さく溜め息をつくと、亀頭をぱくりとくわえ込んだ。
生温かい粘膜に覆われると同時に舌先で尿道口を舐められ、ゾクっとした快楽が背筋を走る。
そのまま頭を動かされると堪らず絶頂に達してしまいそうになり、慌てて母の肩を掴んだ。
しかしそれを無視して喉奥まで呑み込むようにしたので母の口腔内に思い切り精液を放出してしまった。
「ごめん!」と言いながらティッシュを差し出すと、それを唇に押し付けて拭い始める。
お風呂から上がってきた父さんは片手に持っていた缶ビールを飲みつつソファに腰掛けた。
何気なくテレビのチャンネルを変える父さんの隙を見て、母は口を濯ぐために洗面所へと向かった。
戻ってきた時にはいつも通りの優しい母親に戻っていたけど、父は最初から最後まで何も気づくことはなかったみたいだ。
翌朝、いつも通り出勤した父を見送った後、母は家事を始めた。
洗濯機を回したり掃除をしたりとテキパキ動く母を横目に、僕はソファの上でスマホゲームをしていた。
しばらくすると洗い物を済ませたらしい母が近くを通りがかったので、おもむろに声をかけた。
「ねぇ……昨日出来なかったこと、しようよ」
一瞬だけ驚いたようにこちらを見た母はすぐに平静を装う。
「え?ああ……うん……そうだね」
どこかぎこちない返事。
それでも母は僕の性器に手を伸ばすと、優しく撫でるように触れ始めた。
いつものように。
完
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